大阪高等裁判所 昭和57年(ラ)45号 決定 1982年5月14日
抗告人 利根川君子
相手方 近田進
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告人の本件抗告理由の要旨は、原審判が事件本人利根川真理子(昭和三四年一二月二八日生)、同利根川道太(昭和三六年一月五日生)の両名がそれぞれ成人に達する月までの間の養育費のみを定めたことを不服とし、相手方に対し事件本人両名が成人に達した後もそれぞれ希望の大学での学業を修めるために要する学費等の負担を定めるよう求めるというにある。
よつて案ずるに、父母が離婚している場合の未成年の子の養育費について、未成年の子を養育している親権者たる母は、自らが申立人となつて親権者でない父を相手方として家事審判法九条一項乙類四号の子の監護に関する処分として養育費の分担を請求しうるものというべきであるが、その子が成年に到達した場合には母の親権が終了するものである以上、右の子の監護に関する処分としての養育費の分担を請求しうるのは、子が成年に達するまでの分に限られるものであることはいうまでもない。
果して然らば、右の子の監護に関する処分として養育費の分担を求める抗告人の申立に対し原審判が右事件本人両名がそれぞれ成人に達する月までの間の養育費を定めたのは当然であるのみならず、記録によれば、原審判が事件本人両名の養育費について昭和五四年四月以降それぞれ成人に達する月まで毎月金八万円宛に増額する旨を定めたのは相当であると認めることができる。
したがつて、抗告人の本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 今富滋 裁判官 藤野岩雄 亀岡幹雄)